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第8話 

中途で南広志は一瞬目が覚めたようで、感傷的な音声メッセージを送ってきたが、私は彼をブロックした。

 結局、彼らは司湊斗の手下に撮られてしまった。

 写真を手に入れた司湊斗は、離婚に同意し、不倫を重ねた「おしどり夫婦」を認めると言った。しかし、柳詩織には一銭も渡さないと宣言した。

 南広志のような大バカには、必ず柳詩織に責任を持ちたいという瞬間があったに違いないと、私は思った。

 しかし、柳詩織はそれを拒否した。

 彼女は信じられないという表情で、南広志に問いかけた。「一銭ももらえないなんて!あんたは役立たずか?」

 南広志は、彼女以上に信じられなかった。「君は家庭内暴力にあっていて、もう耐えられない、別れたいって言っていたじゃないか!」

 「本当に馬鹿ね。私はお金のために離婚するのよ。あんたのためじゃない!愚かで甘ったれ、昔と同じ、不甲斐ない!」

 柳詩織の顔は歪み、かつての可憐な花の姿は見る影もなくなってしまった。

 彼女は最初から司湊斗の財産を狙っていた。

 南広志は純粋な愚か者だった。

 彼は長くその場に立ち尽くしていたが、柳詩織がドアを開けて出るようとする直前、ついに震えた声で問いかけた。「じゃあ、俺は何なんだ?」

 「大バカだよ」

 私は容赦なく答えた。

 電話の向こうの友人は大笑いしていた。

 手に入らないものは常により良く見えるが、手に入れたときには、その臭さや嫌悪感を発見するだけだった。

 学生時代、彼は柳詩織に翻弄されていた。彼女がちょっと引っかけると、彼は急いで自分の真心を差し出した。

 何年も経った今、その同じ悲劇が再び彼の身に降りかかるとは思ってもみなかった。

 彼は、自ら招いた結果だった。

 11

 「でも、気をつけてね」と友人が電話の向こうで言った。「彼も今日あなたが帰ってくることを知っているから」

 その後の言葉は耳に入らなかった。

 私はもう、空港のお迎えに来た人混みの中で、南広志の顔を見つけていた。

 彼はとても疲れ切った様子で、着ているスーツが皺だらけで、しばらくアイロンをかけていないようだった。顔色は青白く、目は虚ろだった。

 彼は私を家まで送ると言った。

 後部座席に座ると、彼が手慣れた様子で、以前の住所に向かって運転するのがわかったので、無表情で言った。「間違えないで」

 
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